WEB連載

出版物の案内

会社案内

「ファースト・デート」

“First Date”はオースティン・ウインズバーグ(脚本)、マイケル・ウエイナー(音楽・作詞)、アラン・ザッカリー(音楽・作詞)の若手3人の作者と東京のミュージカル・ファンとの初デート(ファースト・デート)となったわけだが、都会的なセンスの点で彼らとはまず相性が良いようだ。

ミシガン州の小さな保守的な町に生まれたケイシー(新妻聖子)は東部の名門ブラウン大学を卒業した後、写真家を目指してニューヨークの画廊で働いている。個性的でトンガっているように見えるが、写真家デビューの個展を薦められると逃げ口上で断るなど本音は臆病で自信がないようだ。
  一見ツッパッているようでその実は不安がいっぱいの女性を、新妻はまるで地のように演じる。

一方、金融マンのアーロン(中川晃教)は男子校の文化祭の「ミス・サイゴン」では女役でジジを演じた、など穏やかで草食系男子に見える。上司に勧められてブラインド・デート(面識のない相手とのデート)にレストランまで出かけてきたものの、スーツにネクタイのイカさない姿。

実はこの二人、ケイシーが(妊娠可能な)生理的年齢のうちに真剣な婚活をするよう、ケイシー姉ローレン(未来優希)が夫の金融マンとその友人で仕掛けたものだ(このミュージカルの切れ味は台詞の奥の都会人の本音だ)。

「ファースト・デート」

バーテン一人(今井清隆)が切り回す小さなレストランでの二人の会話は、元カレ、元カノ、お互いの両親、親戚が応援するのか邪魔するのか絡みあって発展しそうにない。ましてケイシーのゲイの親友レジー(古川雄大)が退席のキッカケとなるよう携帯をかけ続けてくる。

カトリック信徒の両親のもとで育った無神論者のアーティスト志向の女性、結婚式場で婚約者に振られたのをトラウマに持つ真面目なユダヤ教徒の男性。一見縁がなさそうだがミュージカル最初のナンバー「運命の人」(レストランの客たちとウエイター)から最悪の「第一印象」(アーロン・ケイシー)「お勘定」(レストランの客たちとウエイター)まで進むと、お互いがグーグルで前もってチェックした経歴とは異なる内なる声が素直に聞こえてくる。

「ファースト・デート」

アーロンとケイシーはハッピー・エンドで幕。因みに「妹を知るものは姉にしかず」。
(東京シアタークリエ11月22日〜12月4日、大阪サンケイホールブリーゼ12月6日)


2014.12.13 掲載

著者プロフィールバックナンバー
上に戻る