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劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」

「これが少子高齢化の日本なの?!」子ども…子ども…子ども、お父さん、お母さん。おじいちゃん、おばあちゃんも含めた三世代のグル—プも数多い。

夏休みの週末ということで四季劇場「秋」で開幕前に列に加わった子どもたちと保護者の数が半端じゃない。車椅子に乗った数人は脇の列へ。劇団四季の“The Sound of Music”は今や日本の国民的ミュージカルになったようだ。


舞台と一体となった客席

開幕の修道女たちの讃美歌を客席で緊張して聞いていた子どもたちは、舞台が転換して緑の丘になり、両手を広げマリアが「サウンド・オブ・ミュージック」を歌いだすとホッとする。

ペギー葉山の翻訳で学校の音楽の授業でも歌った「ドレミの歌」から「エーデルワイス」、「私のお気に入り」、「もうすぐ17歳」などミュージカルの進行につれて、観客席の子どもたちは口をパクパクさせて無言で舞台と一緒に歌っている。

劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」
[サウンド・オブ・ミュージックの写真]
 

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観客席の大人も子どももストリーは先刻承知。第二次世界大戦直前にオーストリアへ侵略するドイツ・ナチスの下で、妻を亡くし心を閉ざして厳格に子どもを育てているトラップ大佐の邸宅に、修道女見習のマリアが家庭教師として修道院から派遣される。マリアは環境の変化に戸惑いながらも音楽を通して7人の子どもたちの心をつかみ、やがては頑なだったトラップ大佐の心を開き彼と結ばれる。

一方、オーストリアはドイツに併合され、ナチス軍部は元潜水艦艦長のトラップ大佐を召集してくる。大佐はザルツブルグ音楽祭出演をチャンスに、自由を求めて家族でオーストリアを脱出する。

劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」
トラップ家族合唱団はザルツブルグ音楽祭に出演

トラップ・ファミリー合唱団の実話を元に、A.ロイド=ウエバーが制作しリチャード・ロジャーズとオスカー・ハーマシュタインのコンビが生み出した名曲の数々はコマーシャルやバックグラウンド・ミュージックとしても世界に広がっている。観客は「サウンド・オブ・ミュージック」に含まれた名曲の数々を折に触れて歌っていたに違いない。

舞台と観客が一体となったのは圧巻のカーテン・コール。それまで無言で「口パク」だった子どもたちを含め、ほとんど全員が立ち上がって「ドレミの歌」の大合唱!

更にミュージカルの楽しさは帰路にメロディーをつい口ずさむことだが、私を小走りで追い抜いた4−5歳の子どもたち二人の「ひとりボッチの羊飼い」のヨーデルをまねる歌声が実に可愛かった。

「お年玉」に並んで近頃は「お盆玉」が流行ってきたが、「サウンド・オブ・ミュージック」の観劇は子どもたちにとって忘れられないプレゼントになるのだろう。(四季劇場「秋」で上演中)


2015.8.22 掲載

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