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ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」

ウイーン発のホラー・ミュージカルは、まさにスプラスティック・ブラック・コメディー。

帝国劇場内は11月中旬になってもハロウィーン・ムードいっぱいで、観客は主演の山口祐一郎以下のヴァンパイアやお化けたちの動きから目を離すことができず、時々サプライズでショックを受けてはヒステリックに笑いそうになり慌てて口を押える。

モーツァルト!」、「レベッカ」などで世界的ヒットを創造したミヒャエル・クンツェは「ダンス オブ ヴァンパイア」では人間が恐れる死や愛や夜を描き、観客を考えさせたりハラハラ・ドキドキさせたりさせて、最後には人間の業(ごう)全体を笑い飛ばす。


ストーリー

ヴァンパイア研究家天才肌のアブロンシウス教授(石川禅)は、平凡な若者アルフレート助手(平方元基・Wキャスト)とともにヴァンパイアの故郷である極寒のトランシルヴァニア旅行中に吹雪にあい、気絶してしまう。アルフレートは教授を抱え、宿屋に転がり込んでくる。

宿ではヴァンパイアが嫌うガーリックを部屋中に飾り立て大騒ぎしている。アルフレートは風呂好きの宿屋の娘サラ(舞羽美海・Wキャスト)に一目で恋するが、ヴァンパイアの頭領であるクロロック伯爵(山口祐一郎)も彼女に目を付けている。

サラは自由と華やかさを求めてクロロック伯爵の城の舞踏会に向かい、ヴァンパイア・ハンターのアブロンシウス教授とアルフレートも伯爵の秘密を探るべく城に入る。

ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」
クロロック伯爵の霊廟に乗り込んだ
アブロンシウス教授(石川禅)と助手アルフレート (平方元基)

城内は正にハロウイーンの世界。伯爵の息子ヘルベルト(上口耕平)のドラッグクイーン・キャラクターは強烈で、アルフレートに迫ってくる。ユニークなのはノートルダムのカジモドの背中を背負う(せむしという言葉は差別用語になるから使えない)召使のクコール(駒田一)で、彼は幕間にもアドリブの動きでチャッカリ客席からの拍手を催促する。

ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」
ついにサラ(舞羽美海)を襲うクロロック伯爵(山口祐一郎)

クロロック伯爵、山口祐一郎の歌う“抑えがたい欲望”は、愛する者の生き血を吸わなければ生きていけないヴァンパイアの苦しみと予言を真摯に歌い上げるが、彼もフィナーレとなると今まで描いてきた愛や苦しみを笑い飛ばす。

♪真っ赤に流れる血がほしい モラルもルールもまっぴら
たっぷり血を吸えヴァンパイア モラルもルールもまっぴら
踊れ 永久(とわ)に ヴァンパイア
Ah~♪

団体観劇できていた女子高校生たちは怖いもの見たさに鳥肌を立てたまま椅子に固まっていたようだったが、フィナーレの舞台と客席が一体となった「ヴァンパイア・ダンス」では総立ちになって大爆発した。(11月3日~30日 帝国劇場)


2015.11.17 掲載

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