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ミュージカル「ビューティフル」

ツイスト、マッシュポテトなど、アメリカが輝いていた60年代のダンス・フロアを沸かせ、現在もなおシンガー・ソング・ライター、環境保護活動家として活躍しているキャロル・キングの半生を描くジューク・ボックス・ミュージカル。16歳のラッキーなデビュー、コンビを組んだ夫の裏切り、シングル・ペアレントとしての苦悩を乗り越えて28歳の若さで1971年クラシックの殿堂カーネギー・ホールで“Beautiful”コンサートを開くまで、彼女の楽曲でつづる。

彼女がデートしたこともあるというニール・セダカが作詞作曲して歌った“Oh! Carol!”は全米はおろか日本でも大ヒットした。彼女の音楽を祝福するようでワクワクする。

留学先のアメリカで金曜日の夜から土曜日になるまで彼女の音楽で踊りあかしていた同時代人の筆者にとって、日本での“Beautiful”の公演は我が事のように誇らしく嬉しい。

ミュージカル「ビューティフル」
キャロル・キング(平原綾香)とジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)

ストーリー

ブルックリン育ちの16歳のキャロル(平原綾香と水樹奈々のWキャスト)は音楽教師を目指すよう勧める母(剣幸)の願いを振り切ってプロデューサーのドニー・カーシュナ―(武田真治)に曲を売り込み、カレッジで出会った恋人ジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と作詞作曲のコンビとなり、17歳ででき婚。 “Will You Love Me Tomorrow,” “Take Good Care of My Baby”などのヒットを飛ばす。

中でも圧巻などは“The Loco-Motion”。

“Everybody's doing a brand-new dance
Now come on baby, do the Loco-Motion...”

彼らのベビー・シッターだったリトル・エバが試しに歌ったのが爆発的ヒットとなった。ソロでもグループで列車ごっこをしながらでも誰もが気楽に歌い踊れる曲だ。

ミュージカル「ビューティフル」
[“The Loco-Motion”の写真]



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さらにザ・ドリフターズ、シュレルズなどのヴォーカル・グループが彼らの曲を争うように歌い、コンビは最高の輝きを迎える。が、やがて時代が移りヴェトナム厭戦気分の中で、ボブ・ディランやジヨーン・バエズのようなシンガー・ソング・ライターの時代となり、ヒットを出せない焦燥感から神経を病んだジェリーは妻への裏切りを重ね、ついに二人は離婚する。

友人であり好敵手、シンシア(ソニン)とバリー(中川晃教)のコンビとドニーが歌う“You've Got a Friend”が傷心キャロルを心暖かく支え“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”は彼女の自立を告げるようだ。そしてフィナーレのカーネギー・ホールでの公演“ Beautiful”で完結する。

ミュージカル「ビューティフル」
[写真右より]キャロル(平原綾香)、シンシア(ソニン)、バリー(中川晃教)、ドニー(武田真治)

「普通の人」であることを強調した平原綾香のキャロルは危機を迎えてからの成長ぶりが見事で、ソニンと中川晃教の歌手としての実力が舞台を支えている。剣幸の頑固な母親ぶりも笑いを誘う。(7月26日~8月26日 帝国劇場)


2017.8.14 掲載

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