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劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」

昨年10月24日、「オペラ座の怪人」で開幕した劇団四季 秋劇場につづいて、1月10日、新作ミュージカル 「The Bridge~歌の架け橋~」で春劇場がオープンした。竹芝ウォーターフロントに、見事な春秋二大劇場が完成したわけである。コロナウイルス感染症拡大のため、理不尽にも「不要・不急」と邪魔者扱いされていた劇場芸術を、演劇人と観客が人間が生きるための不可欠の存在として認識させた象徴的なモニュメントのように感じられる。

「The Bridge~歌の架け橋~」は劇団四季創立以来68年の作品から名曲を選び、新しい時代に繋ぐ架け橋として再構成した新作ミュージカルで、“ハングリー・キャッツ”の詩の朗読で始まる。この10人の野良猫たちは浅利慶太氏と創立メンバーで、敗戦後の日本に劇場文化を生み出そうと心身の飢餓の中で爪を研いでいたのだ。

劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
オープニング[撮影/荒井健]

オープニングで劇団の原点であるジャン・ジロドウ「オンディーヌ」、アヌイ「ひばり」の作品を打ち出した後、“I Got Rhythm”,“スワンダフル”とテンポよく盛り上げる。

劇団四季最初のロング・ラン公演を打ち立てた、越路吹雪ドラマチック・リサイタルに敬意を表した“ラストダンスは私に”はしっとりと。

ファミリー・ミュージカルのナンバーはコスチュームの図形と色が楽しい。

劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
漁師の道しるべ ~心を開いて「ジョン万次郎の夢」より[撮影/荒井健]

「ミュージカル李香蘭」、 「ミュージカル南十字星」、 「ミュージカル異国の丘」では、浅利慶太氏の平和への強いメッセージが伝わってくる。

「ライオンキング」の“サークル・オブ・ライフ”は迫力満点だし、「オペラ座の怪人」“ザ・ミュージック・オブ・ナイト”の定番の魅力。「キャッツ」の名曲“メモリー”…約30曲の90分にわたる熱演を中途休憩なしで観劇していると、4カ月半に亘って舞台に立てなかった劇場人の口惜しさがこちらの胸にも迫ってきた。

劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
劇団四季「The Bridge ~歌の架け橋~」
アンダー・ザ・シー&パート・オブ・ユア・ワールド
「リトルマーメイド」より[撮影/荒井健]

カーテンコールのダンシング・クイーンでベテラン、若手の全員が一斉に爆発して踊る姿に不覚にも目頭が熱くなった。(2021年1月10日~2月11日 JR東日本四季劇場[春])


2021.2.8 掲載

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