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ミュージカル「ヘアスプレー」

1988年公開された映画を元に2002年ブロードウエイで公開されたこのミュージカルは13部門でノミネートされ、「ベスト・ミュージカル」を含む8部門で受賞。更にミュージカル版から2007年に再映画化され、ジョン・トラボルタが主人公トレイシーの母親役を演じて話題を呼び、人種、外見、ジェンダー等々の偏見と差別を笑い飛ばすミュージカル・コメディーとなった(脚本:マーク・オドネル、トーマス・ミーハン/歌詞:スコット・ウイットマン/歌詞・音楽:マーク・シェイマン/演出:山田和也)。

1962年首都ワシントンの隣町、ボルチモアはアメリカの白人優位の価値観から多様性の肯定への転機を迎えている。公民権法成立を求めてマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが率いる黒人ら有色人種によるフリーダム・マーチ(自由へのデモ行進)、フリーダム・ライダー(黒人に割り当てられた後部座席に座らず、自由に席を選ぶ)に対する白人たちのバック・ラッシュ。しかし同時に金髪でスリムな白人女性から縮毛で太った黒人女性の美しさが見直されはじめる。

大きなゴムまりのように弾む高校生トレイシー(渡辺直美)は、ヘアスプレー会社が提供するダンス番組“コニー・コリンズ・ショー”に出演するのが夢でオーディションに向かうが、ミス・ティーン・エイジを狙う同級生アンバーの母で番組のプロデューサー、ヴェルマ(瀬奈じゅん)から「太りすぎて重すぎる」と拒否される。

ミュージカル「ヘアスプレー」
渡辺直美[写真提供/東宝演劇部]

翌日、ヘアスプレーでばっちり固めた大きな髪型で登校したトレイシーは目立ちすぎる髪型のせいで居残りさせられる。そこでレコード・ショップを経営するメイベル(エリアンナ)の息子シーウィード(平間壮一)と知り合い、彼と彼の仲間の超人的な黒人のブレーク・ダンスに圧倒される。

ミュージカル「ヘアスプレー」
 
[写真提供/東宝演劇部]
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テレビ番組の黒人差別に抗議してメイベル達とデモ行進をしたトレイシーらは一斉に逮捕されるが、憧れのリンク(三浦宏規)に好意を寄せられ、番組司会者のコーニー(上口耕平)にも注目される。

日本語版「ヘアスプレー」の成功は渡辺直美を主人公に迎えたこと。クイーンサイズのタレントで歌って踊れる稀有な存在。幕開きの“グッドモーニング・ボルチモア”からフィナーレの“ビートは止められない”まで元気一杯で観客を魅了する。

ミュージカル「ヘアスプレー」
渡辺直美(左)、山口祐一郎(右)[写真提供/東宝演劇部]

ジョン・トラボルタ以来の伝統でトレイシーの母親役は男性(山口祐一郎)。巨大な体躯を揺さぶってジェンダーへの偏見と差別を蹴り飛ばす。

この舞台の問題は誰が黒人だか判りづらいこと。メイベルもシーウイードも顔を黒く塗らず、日本人の肌の色のままで出演している。原作を知らない観客にもわかるような工夫がほしい。

  • 東京公演:9月17日~10月2日
    於:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
  • 福岡公演:10月7日~10月18日
    於:博多座
  • 大阪公演:10月23日~11月8日
    於:梅田芸術劇場メインホール
  • 愛知公演:11月12日~11月20日
    於:御園座

2022.10.6 掲載

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