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劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」

明るく、楽しく元気をくれる! ジョージとアイラのガーシュイン兄弟作詞・作曲、スーザン・ストローマンの振り付けの作品は、まさにアメリカ発のミュージカルの原点。観劇終わった後まで考える深刻な社会問題を扱った英国発の「レ・ミゼラブル」や「ミス・サイゴン」とは一味違う。劇場を出ても耳に鳴っている“I Got Rhythm”でハッピーになってステップを踏みたくなる。


ボーイ・ミーツ・ガール

舞台は1930年代の華やかなニューヨークと、西部ネヴァダ州の廃坑金山の町デッドロック。ダンスに夢中のボビー・チャイルド(萩原隆匡)はブロードウエイの大物興行師ベラ・ザングラー(荒川務)に自分のタップダンスを売り込むが、あっさり断られてしまう。銀行のオーナーである母親(中野今日子)は息子をダンスから遠ざけるため、超田舎のデッドロックに物件の差し押さえに行かせる。

その物件は潰れかけたガイエテイ劇場で、ボビーは劇場主の娘ポリー(町真理子)に一目惚れするが、当然ポリーは債権者を敵視する。そこでボビーは劇場を救うためザングラーに変装し、休暇中のザングラーの踊り子たちを呼び寄せ一興行打とうとする。

劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」
“Slap That Bass”
[撮影:荒井健]

“Slap That Base”のナンバーでは飲んだくれの鉱山師たちが特訓されて鶴嘴を振るい、セクシーな踊り子たちの身体に身長一杯ロープをはり左右に振ってかき鳴らす、更には踊り子たちが砂金採集用の金属の皿の上で縦横無尽にタップをふむ。スーザン・ストローマンの振り付けが秀逸!「レ・ミゼラブル」のパロディーか学生革命家たちが作った要塞らしき椅子の山の頂上でボビーとポリーが赤旗を振る演出にも笑わされる。

劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」
要塞の上でボビー(萩原隆匡)とポリー(町真理子)
[撮影:荒井健]

ポリーは変装したボビーに夢中になり、廃坑の町にも元気がよみがえってくる。ところが、踊り子のテスを愛する本物のザングラーが現れたのでボビーもポリーも大混乱。ザングラーと変装したボビーが酔っぱらって酒場の床に倒れているのを見たポリーはからかわれたと怒り、傷心したボビーはニューヨークに帰るが、ザングラーが自分の劇場を抵当に入れてまで愛するテスのためガイエテイ劇場の再建を図っているのをみてデッドロックに戻って行く。
ガイエテイ劇場興行は大成功し、恋人同士は結ばれ、舞台満杯の大フィナーレとなる。

劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」
元気がよみがえった町
[撮影:荒井健]

劇場閉鎖、興行キャンセル続きだったコロナ禍明けの観劇にお勧めのミュージカルだ。(KAAT神奈川芸術劇場 2023年4月25日~7月22日)


2023.5.20 掲載

劇団四季 最新ミュージカル制作発表
ゴースト&レディー 2024年5月開幕

劇団四季ではミュージカル「ノートルダムの鐘」の演出家・スコット・シュワルツ氏を迎え、原作:藤田和日郎「黒博物館 ゴーストアンドレデイ」を制作する。19世紀クリミア戦争当時活躍し、近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲールと英国のドルーリー・レーン王立劇場に出没するゴーストとの不思議な縁を描いた人間ドラマである。

劇団四季では英米からの輸入作品では億単位の経費と使用料を支払っているが、このオリジナル作品では海外の二次利用も目標に入れている。

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(右から)演出・スコット・シュワルツ氏と劇団四季代表取締役・吉田智誉樹氏[撮影:上原タカシ]

2023.5.20 掲載

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