ホラホラ、これが僕の骨 中原中也ベスト詩集

汚れっちまった悲しみに……

汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる

汚れっちまった悲しみは
たとえばきつね革裘かわごろも
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる

汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
倦怠けだいのうちに死をゆめ

汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気おじけづき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

『山羊の歌』より
倦怠けだい
なまけ、おこたること。

朗 読

解 説

汚れっちまった悲しみに……

「汚れっちまった悲しみに……」は1930年4月『白痴群』第6号に発表された。『白痴群』は6号をもって廃刊。5月、「ルヤ」第5回発表会で「歸鄕」「失せし希望」(内海誓一郎作曲)「老いたる者をして」(諸井三郎作曲)が歌われる。

「汚れっちまった悲しみに……」は4行4連の変型ソネットで、1連毎に「汚れっちまった悲しみに」と「汚れっちまった悲しみは」が2度ずつ表われる。つまりこの詩は「汚れっちまった悲しみ」のリフレインによって成り立っている。

「今日も小雪の降りかかる」「小雪のかかつてちぢこまる」と冬の季節を表しているが、悲しみが汚れてしまったという表現が白い雪の映像とうまく重なる。

「汚れっちまった悲しみ」というリフレインでこの詩は始まり、この詩は終わるのである。

※スルヤ 1927年、諸井三郎、河上徹太郎、内海誓一郎ら7人の作曲家、演奏家、評論家によって結成された前衛的音楽集団。

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