ホラホラ、これが僕の骨 中原中也ベスト詩集

湖上

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。

沖に出たらば暗いでしょう、
かいから滴垂したたる水の音は
昵懇ちかしいものに聞こえましょう、
――あなたの言葉の杜切とぎれ間を。

月は聴き耳立てるでしょう、
すこしは降りても来るでしょう、
われら接唇くちづけする時に
月は頭上にあるでしょう。

あなたはなおも、語るでしょう、
よしないことや拗言すねごとや、
らさず私は聴くでしょう、
――けれどぐ手はやめないで。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう、
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。

『在りし日の歌』より

朗読

ご感想

豊かに生きたいセミさん 2017/10/03 17:06:32

ロマンチックな詩なのに、やっぱり切なさがただようのは中原中也の詩だな~と思います。 ポッカリ、という言葉の遣い方が好きです。情景が浮かんできます。映画のワンシーンのようなものを、言葉だけで表現するなんて天才だと思います。

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